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新潮講座「苗字の由来とファミリーヒストリー」受講

以前、新潮講座で「台湾有事問題」を受講したのがきっかけで、他のプログラムにも目がいくようになり、過日、「苗字の由来とファミリーヒストリー」を受講した。

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講義開始前に、講師のスタッフの方が作成したという巨大な家系図を見せていただいたが、なんと武田信玄や信虎の名前が出てきたり、さかのぼった先には、はるか昔の天皇の名が書かれていたり。もちろん、先祖のすべてが確実な資料で特定できるわけではなく、推定も入っていて、「断定まではできないが、たぶんこうだろう」というところは点線でつないであった。

お話によると、完成まで2年かかったという。パズルのピースを埋めていくのと同じで、ひとたび始めたら最後までピースをはめ込まないと気が済まなくなるのだろう。そういう意味では、安易に手を出さない方がいいのかもしれない。やるならほどほどにしておかないと、時間も労力も、もちろん相当なお金もかかる。

しかし、自分のルーツをたどる作業だから楽しいだろうなと思う。講師の方はお父様が北方領土のご出身だという。父親がなぜ北方領土に住むようになったのか、その前はどこで何をしていたのか、といったことに興味を持ち、独学で調べて分かった範囲で家系図を作り、親族に配ったところ大変喜ばれたそうだ。それが起業のきっかけとなった。

ここ数年、NHKの「ファミリーヒストリー」が評判を呼んだせいか、「ルーツ探し」に関心を持つ人が増え、事業は好調だという。

講義のテーマは次の通り。

①苗字と家紋の由来

②戸籍謄本申請について

③戸籍謄本の解読とくずし字の読み方

④祖先の暮らした場所と旧土地台帳について

郷土史と自分の一族のルーツを知る手がかり

⑥軍歴証明の取り方

私は「軍歴証明の取り方」に一番興味があった。ご多分に漏れず、我が先祖も戦争に行っている。傍系の親族である程度詳しいことが分かっている人がいるが、直系の先祖ではこれといった情報がない。そもそも「軍歴証明」という言葉も初耳だった。

今ではシベリア抑留者の抑留地に関する情報も、厚生労働省が日本語に翻訳して閲覧できるようにしているという。

家系図については、「いつか時間ができたら遡れるところまででいいから作ってみたいな」と思ったことはある。ただ、この講座を受講するまでは非常に安易に考えていて、その気になればすぐ作れるものだと思い込んでいた。

が、さにあらず。最新の電子化された戸籍は別として、それ以前のものは、取り寄せることができても、読めないことも多いらしい。古い戸籍になればなるほど、この字は何という字なのか分からない、ということが起きる。

講師が前のボードに示した変体仮名の実例を見て、読み方を考える時間があった。8割方(もっとかも)読めなかった。読めるようになるには、それなりの勉強と慣れが必要になる。

先祖を知るためには、まずは戸籍謄本の取得から始めることになる。しかし、戸籍にも時代によっていろいろなものがあるのを初めて知った。

1994年施行の「平成6年式」(電子化)、1948年施行の「昭和23年式」、1915年施行の「大正4年式」、1898年施行の「明治31年式」、1886年施行の「明治19年式」、1872年施行の「壬申戸籍」等々。

それぞれの改製前の戸籍のことを「改製原戸籍」というが、これも初めて知る知識だ。壬申戸籍は、現代の基準に照らして差別的記載が多いということで、1966年以降閲覧が禁止されている。しかし、閲覧できないとなると、戸籍でのルーツ探しはそこで途切れてしまうわけで、子孫も見られないというのはおかしいと思う。

しかし、見られないものは仕方がない。それ以上ルーツをさかのぼる場合は、お寺の過去帳を見せてもらったり、お墓の調査をしたりすることで分かることがあるという。その他、あの手この手の合法的手段を駆使してさかのぼっていくそうだ。

NHK「日本人のお名前」という番組でも分かるように、苗字の地域的な分布にはかなり明瞭な特徴がある。この苗字も重要な手がかりになるという。

お話の中で一つ面白いと思ったのは、明治以前の一般庶民は姓を持たないと考えられてきたが、最近ではそれが否定されて、「庶民も姓を持っていた」という説が有力になっているそうだ。たとえば、お伊勢参りや大山参りなどで宿泊した宿帳には、苗字が記されているという。そういう例はたくさんあるそうだ。

驚いたのは、戸籍には法律で保存期間が決められていて、保存期間は150年だという。なぜ永久保存しないのか理由がわからない。保存期間を80年としていた時期もあり、自治体によっては、お上の言うがまま杓子定規に廃棄したところもあるそうで、その場合は大正時代にさえさかのぼることができない。

自分の戸籍を遡っていくと、どんなことが分かるのだろうか。またそもそも電子化される以前の戸籍とはどういうものなのか。昭和の戸籍、大正の戸籍、明治の戸籍、それぞれどうなっているのか。だんだん興味が湧いてきた。

軍歴証明も、終戦時の本籍地を確認しておかないと請求できない。

今回の受講はいい機会になった。「いつか調べてみたい」から「時間を見つけて少しずつやっていこう」に考えが変わった。戸籍といえば、昨今は選択的夫婦別氏制の導入に熱心な学者が戸籍制度をやり玉に挙げて、「戸籍をなくすべき」と主張する人もいる。一体どういうことなのか? そんなことを考える機会にもなるかもしれない。