回り灯籠

憲法9条を改正して新しい日本を築こう

第3次世界大戦になるのを恐れていたらウクライナは守れない

ロシアによるウクライナ侵攻が目前に迫っているというのに、日本の政界はもちろんメディア界にもまるで危機感が感じられない。今ほど日本にもニュース専門チャンネルがあったらと思ったことはない。地上波やBSのテレビチャンネルをひねっても、北京五輪の番組はさておき、こう言っては申し訳ないが能天気な番組ばかり。ポツンポツンと今の国際情勢の危機を伝えてくれる番組やニュースはあるが、各局に散らばっているので見逃してしまうことも多い。

日本にはなぜニュース専門チャンネルがないのか

これを見ていれば、刻々と動く国際情勢や国内政治・経済動向のだいたいのことがわかるというニュース専門チャンネルがあってもいいのではないだろうか。重要な問題を、日々の断片的なニュースとして報じるだけでなく、その背景に何があるのか、これまでの経緯はどうか、今何が問題とされどんな議論がされているのか、諸外国の取り組みはどうなっているのかといった幅広い観点から報道もしくは解説してほしいし、異なる見解が対立しているならば双方の立場を公平に紹介してほしいと思う。

アメリカにはニュース専門のCNNやFOXニュースがあり、CNNは左派系、FOXニュースは右派系ということで、視聴者は両方を見比べながら自分の考えをまとめることができる。日本にもそういうチャンネルが出てきてほしい。

テレビと違って動画では、左右いろいろな立場から情報や意見の発信がなされていて、そこから得られる貴重な情報や意見もあるけれども、残念ながらニュースの報道・解説番組の域には達していない。これはテレビと違って資金力が圧倒的に不足しているためだろう。

ウクライナ危機に関しては、なぜ今こういうことになっているのか、ソ連時代、ソ連崩壊後の東欧諸国の独立と混乱、NATOの東方拡大、ロシアのクリミア併合など一連の歴史的経緯を詳しく伝えてくれたらと思うが、そんな番組にはお目にかかれない。

どれを見ても解説が浅い。「あれっ、もう終わり?」と思うことがしばしばだ。

ソ連崩壊後、ウクライナ核兵器保有していた。しかし新生ロシアは民主化、自由化の道を進み、かつての全体主義覇権国家には戻らないと確信してウクライナ核兵器を手放した。その判断は正しかったのかどうなのか。

「ロシアとは直接戦わない」は、事実上のウクライナ見殺し宣言か

ロシアがウクライナに侵攻すればロシアには重い経済制裁を科すことでアメリカと英仏独などは一致している。しかし、いくらロシアに制裁を科しても、その時、当のウクライナはロシア軍に占領され、国土は蹂躙されてしまうのだ。ゼレンスキー首相が生き延びられる保証はない。

かつてソ連アフガニスタンに革命を輸出して社会主義政権を誕生させたが、意のままにならないと見るや電撃的にアフガンを侵略してアミーン革命評議会議長を暗殺、傀儡政権を発足させた。1979年末のことである。以来、アフガニスタンイスラム戦士ムジャヒディンはアメリカの支援を受けてゲリラ的にソ連軍と戦い、ソ連を撤退させるまで10年近くかかっている。

www.yomiuri.co.jp

バイデン大統領はアメリカが軍事介入すれば第3次世界大戦になるから介入しないという(「米国とロシアが撃ち合いを始めれば世界大戦になる」)。あくまで側面支援にとどめるつもりらしいが、それでロシアの動きが止まるとは思えない。ロシアの狙いはNATOの東方拡大阻止を口実にウクライナを自らの勢力圏に置くことにある。

NATOが不拡大を拒否すれば、ロシアは必ずウクライナに侵攻する(侵攻の態様は小規模から大規模までいろいろ考えられる)。逆にNATOが不拡大を約束すれば、一時的にウクライナ危機は回避されるかもしれないが、ロシアは既にウクライナ国内に堅固な拠点を築いている。併合したクリミアや親ロシアの東部2州を支援してじわじわと西へ勢力を広げ、いずれウクライナ全土を支配下に置くだろう。

ウクライナが親欧米国として生き延びる道はNATO加盟しかない。しかし、クリミアを奪われ、東部を親露派に牛耳られている現状では難しい。だとしたら、ウクライナを救う道は、ウクライナを事実上のNATO加盟国とみなし、ウクライナが侵略されれば加盟国が結束して軍事力を行使して侵略国を撃退する以外ないだろう。

NATOは互いに集団的自衛権を行使する約束を結んだ軍事同盟である。しかし、集団的自衛権を行使するのに事前の約束は必要不可欠ではない。同盟関係にない国の要請に応じて集団的自衛権を行使しても全く問題ない。

もちろん、本当に戦争になったら大変だ。だが、大変なのはロシアだって同じ。だからこそ「ロシアがウクライナを侵略したら、NATO加盟国と友好国(日本を含む)は第3次世界大戦を覚悟してでも断固軍事力を行使し、侵略国を撃退する」と宣言し、その態勢を整えることが、ロシアの理不尽な侵略を抑止するのである。

バイデン大統領にはそれがわかっていない。初めから「アメリカはウクライナを支援はするが軍は派遣しない。軍の派遣は周辺国に対してのみ」と公言しているようでは、ロシアの思う壺だ。これは事実上のウクライナ見殺し宣言ではないだろうか。

失敗だった安倍首相の対露外交

事ここに至っては、安倍首相の対露外交の失敗は明らかだ。北方領土返還に執念を燃やした安倍首相の気持ちは大いに評価するが、プーチンがクリミア併合の挙に出た時点で北方領土返還交渉は封印すべきだった。これは結果論かもしれない。しかし、日本がG7各国と足並みを揃えず、形だけの制裁にとどめロシアと交渉を続けたことがロシアを増長させてしまった。

それで北方領土が返ってきたのならまだ意味もあったが、返還交渉は1ミリも前進しなかった。前進どころか交渉は後退したというのが真相だろう。プーチンは日ソ共同宣言が日露間の唯一の交渉基盤だと言い、その日ソ共同宣言は歯舞、色丹を引き渡すと明記したのに、「引き渡すと言っても主権まで渡すとは書いてない」などと詭弁を弄する始末だ。例の「ヒキワケ」発言に乗せられて、今交渉すれば双方が折り合う形で解決できるという幻想を抱いたのが間違いだった。

いざ交渉を始めたら「北方領土を返したら米軍基地ができるのではないか?」などと難癖を付けてきたのも、日本に「アメリカには北方領土に基地を作らせない」と約束させて日米離間をはかるのが狙いだったのだろう。

アメリカがそんな要求を呑むはずがないが、もし呑んだら、日本の防衛に小さくない穴が空くことになる。アメリカ側から見れば、日本からそんな要求を出されたら白けるだけだ。

ウクライナを見殺しにすれば、次に侵略されるのは台湾、尖閣諸島

アメリカが軍事介入すれば第3次世界大戦になるから介入しない」というバイデン大統領の発言は、日本にとっても台湾にとっても深刻な意味を持つ。そこには、中国相手の戦争もしないという含みが感じられるからだ。

台湾有事となっても、尖閣有事となっても、核兵器保有する中国相手に戦争はできない。これがバイデン大統領の本音ではないだろうか。台湾有事、尖閣有事においてアメリカが対峙する相手は、中国1国ではなく、中露2国となる可能性がある。中国もロシアもアメリカ本土に核兵器をぶち込む能力を持っている。「アメリカが介入すれば第3次世界大戦になるぞ」と中国やロシアが脅してきたら、バイデン大統領は介入を躊躇するだろう。

ウクライナ有事と台湾有事、尖閣有事は連動している。本来なら日本はとっくの昔に憲法9条を改正するか解釈改憲を行って集団的自衛権を完全行使できるようにしておくべきだった。そして武力行使は自衛のためはもちろん、国際平和のためにもできるようにしておくべきだった。そうすることは国連憲章の精神に沿った主権国家の当然の権利であり、また義務でもある。

しかし、今の日本は半人前国家であり、そんなことは望むべくもない。ならばせめてロシアに対し、「ウクライナに侵攻したら、考え得る最大限の制裁をもって望む」と断固たる態度を明らかにすべきだ。

日本は地球規模の問題に取り組むG7の一画を占める。ウクライナ危機を他人事のように扱うことは許されない。