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ロシア、ついにウクライナ軍事侵攻へ。CSIS「6つの軍事シナリオ」の2番目に相当

ついにロシアがウクライナへの軍事侵攻に動き出した。「侵攻」というより「侵略」と言った方がその意味するところの重大さが伝わると思う。産経新聞は見出しでは「侵攻」とし、本文中に「侵略」の語を使っている。

www.sankei.com

【モスクワ=小野田雄一】ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部の一部を実効支配する親露派武装勢力ドネツク民共和国」と「ルガンスク人民共和国」(ともに自称)を一方的に国家承認する大統領令に署名した。ロシアと両「共和国」間の協力協定も締結。プーチン氏は両「共和国」からの要請という形で、ロシア軍を「平和維持部隊」として親露派支配地域に派遣することを国防省に命じた。ロシア軍のウクライナ入境は明確な軍事侵攻で、米欧は対抗措置を講じると表明した。

プーチン氏は大統領令署名に先立つテレビ演説で、ウクライナ北大西洋条約機構NATO)に加盟すれば、「ロシアの脅威になる」と主張。親露派支配地域に住む自国民保護やロシアの安全保障を確保する重要性を強調し、「両共和国の独立と主権を認める」と述べた。国家承認は、2014年のウクライナ南部クリミア半島併合に続く一方的な「現状変更」の試みとなる。08年のジョージアグルジア)侵攻も同様の手法がとられた。

ロシアは従来、親露派と政府軍との間のウクライナ東部紛争について「ウクライナの国内問題」とする立場をとってきた。国家承認は東部紛争の和平合意「ミンスク合意」や、ウクライナの領土保全を定めた1994年の「ブダペスト覚書」違反だとみられる。

一方、バイデン米大統領は21日、対抗措置として、東部2地域における米国人の新たな投資や貿易、金融取引を禁じる大統領令に署名した。米政府高官は追加的な制裁措置を22日に発表すると述べた。欧州連合(EU)も21日、限定的な制裁を実施する構えを示した。ウクライナのゼレンスキー大統領はバイデン氏と電話会談し、ロシアの侵略に対する同盟・友邦諸国間の結束を再確認した。

ウクライナ東部では同国の親露派政権が崩壊した2014年の政変を機に、ロシアを後ろ盾とする親露派武装勢力が蜂起。ウクライナ軍との紛争に発展した。これまでに、双方で約1万4千人が死亡したとされる。

2月8日のNHK国際報道2022は、アメリカの戦略国際問題研究所CSIS)が先月発表したウクライナ情勢に関する報告書を紹介し、執筆者の1人、セス・ジョーンズ上級副所長にインタビューして「6つの軍事的シナリオ」を解説していた。

www.nhk.jp

ジョーンズ氏はその中で、当面最も可能性が高いのはシナリオ②か③と述べていたが、ロシアがウクライナ東部の親露派支配地域へ正規軍で侵攻した場合、これはジョーンズ氏が示したシナリオ②に相当する。

二つ目は、親ロシア派の武装勢力が支配する地域に部隊を送るというものです。ロシアから親ロシア派の支配地域までの部隊派遣は、本格的な戦闘なしに実行可能で、ウクライナ政府に揺さぶりをかける作戦と見られています。(NHK国際放送2022、2月8日)

ロシアはあからさまな侵略と見られないように、親ロシア派支配地域に「独立国」という地位を与え、その要請に基づいて派兵するという巧妙な作戦を取った。これだけでは直接的な人的被害は生じないか、生じてもわずかだろうから、非難する側としては極めてやりにくい。

しかし、これを見過ごしてしまえば、ロシアは嵩にかかって軍事力を行使してくるだろう。ロシア軍が親ロシア派支配地域を越えて西方に進撃すれば、必然的にウクライナ軍との戦闘になる。これはもう戦争、それも侵略戦争である。

ロシアの要求である「NATO加盟国を拡大しない法的保証」をNATOが受け入れることはあり得ない。そんなことをすれば、NATO加盟を望む国や加盟を選択肢に入れている国々を見殺しにすることになるからだ。ウクライナも欧米から見捨てられたと感じるに違いない。NATOに加盟するか否かは、その国とNATOとの間の問題であってロシアは関係ない。

ロシアの要求を拒否しつつ、ウクライナを防衛するには、NATOが軍事介入してロシア軍と全面的に対峙するしかない。しかし、現時点でNATOに加盟していないウクライナのために、NATO加盟国が集団的自衛権を行使して軍事介入するには、極めて高度な政治決断が必要だ。

愚かにも「ウクライナが侵略されても軍は派遣しない」と言ってしまったバイデン大統領にその決断ができるとは思えない。おそらくロシアはウクライナ全土の制圧を目指して動き出すだろう。経済制裁だけでロシアの軍事行動を止められるわけがない。

「戦争をしたくない」アメリカや欧州諸国の弱腰をプーチンは見透かしている。ウクライナは今や力の空白地帯であり、アメリカや欧州諸国が結束してその空白を埋めない限り、ロシアはどこまでも入ってくるだろう。

悲しいかな、ウクライナはどうあがいても見殺しにされる運命にある。