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ロシアのウクライナ侵略に断固抗議する! プーチンの論理には一片の正当性もない

バイデン政権が再三にわたって「ロシアの侵攻はある。プーチンは既に決断したと思う」と言ってきたのに、軍事学者の小泉悠氏ですら「頭ではわかっていても『まさか本当にやるとは』と驚いた」と報道ステーション(24日夜)で語っていたのには驚いた。アメリカが矢継ぎ早に公開した機密情報の全てがロシアの軍事侵攻、すなわちウクライナ侵略が目前に迫っていることを示していたのに。

私自身、プーチンが本気で侵攻すると確信したのは、ベラルーシでの軍事演習終了後に撤退するとの前言を翻し、事情が変わったとしてそのまま軍を残した時だ。また、ロシアはそれより前、「一部の軍隊を撤退させた」と強調した。しかし、アメリカはウクライナ周辺に張り付いたロシア軍はむしろ増強されているとして、ロシアの偽情報に惑わされてはならないと警告していた。

こうした点からみて、ロシアは本気でやるなと思ったものだ。

ウクライナを北・東・南の三方から大軍勢で囲んだロシアが、自分たちの要求(NATOの東方拡大阻止など)が受け入れられないのに、すごすご撤兵するはずがない。何度外交交渉を繰り返そうと欧米側が呑めない要求なのだから、プーチンがやることは1つしかない。核戦力をちらつかせての侵略である。

国連5大国の一員でありながら、国連憲章で禁じられている武力威嚇に次いで、ついに武力行使にまで踏み切ったロシアは、まぎれもない侵略国家である。

プーチンは「NATOは1インチも東方拡大しないと約束したのに破った」と怒っているが、でたらめだ。テレビ報道を見ていると、(私が見た限り)どの番組もこのプーチンの言い分を無批判に紹介しているが、なぜはっきりウソ、デタラメ、捏造と指摘しないのか不思議でしょうがない。事情を知らない人は「欧米が約束を破ったからプーチンを怒らせてしまった、欧米側が悪い」と思うだろう。

しかし、「NATOは1インチも東方拡大しない」という言葉は、1990年の東西ドイツの統一交渉の際にアメリカのベーカー国務長官や西ドイツのコール首相がソ連側に語ったとされるもので、NATO東ドイツ地域にまで延長しないことを指したものである。

しかも、あくまで統一交渉の過程で出た発言にすぎず、最終的には、統一ドイツがまとまってNATO加盟国となることをソ連は認めたのである。

NATOは他の諸国へ1インチも東方拡大しない」と取り決めた合意文書は存在しない。そんなものがあるとは聞いたことがない。合意文書があるというなら、プーチンは出して見せたらよい。

国際約束を反故にしたのはプーチンの方だ。この点は、細谷雄一氏の述べている通りである。

www.sankei.com

ウクライナクリミア半島を併合したロシアこそ、1994年にウクライナの主権と国境を尊重すると明記し、自らも署名した「ブダペスト覚書」などの合意を反故にしている。

テレビ報道はこういうことをちゃんと言うべきだ。ロシアは既にクリミアを併合した時点でブダペスト覚書を踏みにじっている。今更ありもしない「NATOの東方不拡大合意」なるものを持ち出して自らの侵略を正当化するとは、盗人猛々しいにもほどがある。

「自衛のため」というのも全く通用しない。ロシアがウクライナから攻撃された事実はないし、そもそもウクライナはロシアを攻撃しても何のメリットもない。ウクライナが先にロシアに攻撃を仕掛ければ、当然ロシアから合法的な反撃を食らい、甚大な被害を受けるだろう。そんなバカなことをウクライナがやるだろうか。あり得ない話だ。

だから、この「自衛」という論理を成り立たせるためには、独立宣言をしたウクライナ東部の親ロシア派武装勢力を「独立国」として承認し、その「国」がウクライナから攻撃されていることに対し、集団的自衛権を行使して軍事介入した、という筋書きが必要になる。

しかし、親ロシア派武装勢力ウクライナ軍との間にミンスク合意を結んで停戦を約しており、この停戦が破られたからといって、親ロシア派の支配地域がいきなり国家に格上げされることなどあり得ない。

停戦合意すら順守できないのだから、当然、国境の画定もできない。独立に向けた公式協議もできない。ウクライナから見れば自国領土内で特定勢力が勝手に「独立した」と叫んでいるだけ。ウクライナの同意なしに独立は認められない。ロシアが承認しようがしまいが、関係のないことだ。

集団的自衛権の行使の前提となる独立主権国家が存在しないのだから、「自衛」(集団的自衛権行使)の論理を持ち出しても通用しない。

いや、ロシアは「我々は個別的自衛権を行使したのだ」と言うかもしれない。プーチンはずっと「NATOの東方拡大はロシアにとっての脅威」「ロシアの安全保障が脅かされている」と言ってきたから、「自衛のための武力行使」という位置付けで個別的自衛権を行使したと見る方が、まだ論理的には辻褄が合う。

しかし、これも所詮はこじつけだ。NATOに加盟していないウクライナがロシアの脅威になるわけがない。ウクライナNATO加盟に向けた交渉も進展していなかった。

また、たとえウクライナNATOに加盟したとしても、NATOは防衛的な集団安全保障機構である。ロシアが国際社会のルールに則って行動しさえすれば、何ら脅威となる存在ではない。これを脅威ととらえるのは、ロシア側の独りよがりな被害妄想である。

ウクライナ自身、「ブダペスト覚書」に基いて核兵器ICBMも全て放棄し、ロシアに引き渡しているではないか。核大国ロシアが吹聴する「脅威」は、ウクライナを勢力下に置くための口実にすぎない。