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ロシアのウクライナ攻撃を「侵略」と呼ばないNHK

NHKの朝のニュースや午後7時のニュース、ニュースウォッチ9などを見ているとわかるが、NHKはロシアによるウクライナ侵略を決して自ら「侵略」とは言わない。テロップなども同様だ。私が知る限り、NHKは「軍事侵攻」の語ばかり使っている。

「侵略」を使うのは、ゲストがそう発言したときや内外の要人が発言したとき。その場合はそのまま放送している。

では、なぜNHK自身は「侵略」と言わないのだろうか?

軍事侵攻は、まさに攻め込んでいるプロセスを表現する言葉である。ロシアが軍事侵攻した結果、現在我々が見ているのは、ロシアの武力行使に対し、ウクライナ自衛権を行使して必死に抵抗している姿である。一方的に武力攻撃を行ったのはロシアであり、非は全面的にロシアにある。

これは紛れもなくロシアによる「侵略」だ。「侵略戦争」と呼んでもよい。現状を表現するのに最もふさわしいはずのこの言葉を絶対使わないというNHKの方針は、一体どこから来るのだろうか?

「侵略」か「進出」か~1980年代の教科書誤報事件

かつて1980年代に起きた教科書誤報事件では、文部省が教科書検定で、華北への「侵略」を「進出」と書き換えさせたとして国際問題になった。すぐに誤報だったことが明らかになったが、大多数のメディアはその事実を無視または軽視し、おわびも訂正もしないまま政府批判を続け、日本政府は中国や韓国に謝罪する羽目になった。

つまり、当時のマスコミの大多数は中国大陸での過去の日本軍の行動を「侵略」ととらえたわけである。おそらくNHKもそうだろう。

「侵略」を否定して更迭された田母神俊雄航空幕僚長

最近の事例では(といっても十数年前だが)、田母神俊雄航空幕僚長が民間企業の懸賞論文に応募した際、政府見解と異なる歴史認識を公にしたとして更迭された事件がある。

あの時、NHKはこんな報道をしていた。

 先の大戦をめぐり、政府見解と異なる論文を発表し更迭された前の航空幕僚長が、去年(2007年)、航空自衛隊の部内誌にも侵略や植民地支配を正当化する論文を寄稿していたことが判りました。

 (中略)

 航空自衛隊のトップだった田母神俊雄(たもがみとしお)航空幕僚長は、企業グループが主催する「懸賞論文」に応募し、先の大戦をめぐり、「我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡れ衣である」などと政府の見解と異なる主張をして更迭されました。

 (中略)

 また、田母神氏は、これより前の去年5月にも、航空自衛隊の部内誌に、先の大戦について「決して中国侵略のために兵力を投入したのではない」「日本の統治下で朝鮮半島は飛躍的な生活水準の向上を見た」などと侵略や植民地支配を正当化し、政府の見解と異なる論文を寄稿していたことが判りました。

これは2008年11月5日のNHKニュースである。

日本は過去に中国を「侵略」したと言いながら、今回のロシアの蛮行は「軍事侵攻」としか言わないNHK

これでわかるように、NHKは政府見解に沿って「日本は中国を侵略した」という歴史認識に立ち、田母神氏が現職当時、この認識を否定していたことを問題視してニュースにしている。

ところがどうだ。NHKは過去の日本が中国を侵略したと断罪しておきながら、今回のロシアの国連憲章違反の武力行使については「侵略」とは言わないというのである。異常な認識ではないだろうか。

NHKの回答は「総合的判断から『軍事侵攻』を使っている」

私がこの点についてNHKについて問い合わせたところ、木で鼻をくくったような回答をいただいた。

NHKでは総合的な判断から軍事侵攻という表現を使っていますが、今後も状況に応じて適切な表現に努めて参ります。

総合的な判断から「軍事侵攻」の語を使っているそうだ。一体どんな総合的判断なのだ。武力行使が始まった当初なら「軍事侵攻」でもいいだろう。しかし、ロシアは国際社会からごうごうたる非難を浴びせられ、前代未聞の強い制裁を科されている。

我が国では衆議院が3月1日参議院が2日、ロシア非難決議を採択し、「ロシア軍による侵略を最も強い言葉で非難する」と明記した。岸田首相も「侵攻」ではなく「侵略」の語を使ってロシアやベラルーシを非難した。

www.sankei.com

朝日新聞でさえ、ロシアの暴挙を「侵略」と明言して強く非難している。(以下の引用は「就活ニュースペーパーby朝日新聞」から)

ヨーロッパではナチスドイツによるポーランド侵攻で始まった第2次世界大戦以来の大規模な侵略戦争であり、戦後築かれてきた国際秩序を揺るがす明確な国際法違反の蛮行です。

「ヨーロッパでは第2次世界大戦以来の大規模な侵略戦争」というのが朝日新聞の認識だ。戦後、侵略戦争はいくつもあったが、ヨーロッパに限ってみれば、第2次大戦以来の大規模な侵略戦争だと朝日新聞は書いている。この認識は正しい。

衆参両院も岸田首相も「侵略」と言っているのに、、、

NHKも「ロシアによる軍事侵攻で始まったウクライナ侵略」という認識を明確にし、それを放送で力強く伝えるべきではないか。「侵略」と言い切ると何か不都合でもあるのだろうか。ロシアに忖度しなければならない事情があるのかという疑いを持たざるを得ない。

「状況に応じて適切な表現に努める」というのなら、国会が衆参そろって「ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議」を採択した今、「侵略」の語の使用をためらう理由はない。