回り灯籠

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紅葉(黄葉)の高尾山で遭遇したシベリア抑留者と硫黄島戦没者の慰霊碑など②

シベリア抑留者供養碑の近くには、「満蒙大陸林業人供養塔」や「硫黄島戦没者慰霊碑と平和観音像」、「支那駐屯歩兵第ニ聯隊 慰霊顕彰碑」などもあった。

硫黄島戦没者慰霊碑は不思議な形をしていた。「近代史跡・戦跡紀行~慰霊巡拝」サイトによると現実の硫黄島の形を模したものだという。平和観音像の手前に永代供養碑があり、「厚生大臣小泉純一郎書」と刻まれているが、これは後から同サイトを見て知った。

悲しいかな、現地では気づかなかった。

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硫黄島戦没者慰霊碑と平和観音像。左下にわずかに見えるのが永代供養碑。

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慰霊碑の脇に建つ由来を刻んだ石碑

一連の供養碑、慰霊碑に手を合わせてから、巨大な仏舎利塔の正面に回る。左脇に「日泰親善 高尾山佛舎利奉安塔」の石柱が建つ。尖塔の白と青い空、そして紅葉のコントラストが美しい。

ここは登山ルートの喧噪が噓のように、ほとんど訪れる人もなくひっそりとしていた。慰霊、供養、そして祈りにふさわしい霊域と言えるかもしれない。

仏舎利塔の手前には、両脇に天狗を従えた飯縄(いづな)大権現の猛々しい銅像が祀られている。高尾山薬王院真言宗寺院で本来の本尊は薬師如来だったが、14世紀に飯縄大権現を祀るようになったという。

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日タイ親善の仏舎利塔と手前は2体の天狗を従えた飯縄(いづな)大権現の銅像

薬王院の解説にはこうある。

天狗様は飯縄大権現様の眷属(随身)として、除災開運、災厄消除、招福万来など、衆生救済の利益を施す力を持ち、古来より神通力をもつとされ、多くの天狗伝説や天狗信仰があり、神格化されています。

行基菩薩開山以来「薬師如来」を本尊として奉祀してきた高尾山は、俊源大徳の祈請によって「飯縄大権現」を勧請し、爾来これを本尊として奉安している。

権現様と言えば、すぐ思い浮かぶのは徳川家康を祀る日光東照宮東照宮は神社だから権現は仏ではない。神である。飯縄大権現も神なのだが、仏の化身とされているので寺院でお祀りすることに違和感はないようだ。仏教と神道をことさら分けない神仏習合が昔は一般的だった。

山門をくぐって護摩受付所や土産物店、休憩所などが両側に並んだ道を行く。周囲の紅葉が何とも言えず美しい。

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山門から仁王門に至る参道から本堂横の鐘楼堂を見上げる

参道から階段を上って仁王門をくぐると本堂がある。そこは仏教寺院・薬王院の本堂なのだが、扁額には「飯縄大権現」と大書されていた。

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真言宗薬王院・本堂の扁額

この本堂のすぐ奥には鳥居があり、その先に飯縄大権現を祀った朱塗りに色彩豊かな装飾を施した権現堂がある。しかし、我々はもう本堂でお参りを済ませたので、この権現堂が何を意味するのか分らなかった。大半の登山客もそうだったようで、みんな権現堂を素通りしてお堂の横手に回り、そのまま山頂へ通じる道を登っていく。その時は「ずいぶん派手なお堂だな」としか思わず、家に帰ってから、ちゃんと見ておけばよかったと後悔した。

ここから先は、山頂までひたすら歩くのみ。といっても、大した距離ではなかった。山頂は広い平坦地でビジターセンターの建物が建っている。若い中国人たちが樹木の下に大きなシートを敷いて座り、紅葉狩りを楽しんでいた。

見晴台からは、左(南)から順に大山、丹沢山(南南西)、蛭ガ岳(同)、大室山(南西)などが見え、加入道山(南西)の隣に富士山のシルエットが浮かぶ。

この日は富士山の頂に雲がかかり、全体的にもやっとした風景だったが、視界いっぱいに広がる山並みを一望の下に見渡せるのは爽快である。

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左から大室山、加入道山、そして富士山~高尾山上の見晴台にて

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高尾山頂から一望できる山々の名前と位置を記した案内板(部分)

山頂の一角にきれいに黄葉した木が1本立っていた。家内はハナミズキだという。その近くで弁当を食べ、下山を開始した。

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家内の説によるとハナミズキらしい

帰りは4号路を下ったが、1号路と違ってかなり傾斜がきつかった。高い段差のある道を降りていくのは、膝に負担がかかってしんどい。片足を下ろすときの衝撃が膝にくる。同じ道を引き返せばよかったと思ったが後の祭り。吊り橋見たさに我慢して歩いた。

4号路は途中で1号路に合流し、歩いて下山したい人はそのまま1号路、つまり元来た道をたどればいい。しかし、多くの人がリフト乗り場もしくはケーブルカー乗り場に向かうから、どちらも大混雑していた。

リフトに乗るまで約45分待機。ここまで来ると疲れていて紅葉狩りどころではない。夕方でかなり寒くなっているのに、自動販売機のホット飲料水はすべて売り切れだった。順番を待つ間やることがなく、出店の串団子を食べて時間をつぶした。結果的にこの団子、かなりうまかったが、お腹にたまってとろろソバを食べるどころではなくなってしまった。

リフトに乗っている時間は結構長く感じた。終着点が見えてくる頃、左の茂みからカメラマンの声がかかり、写真を撮ってくれる。リフトを降りると若い写真屋さんが待っていて今さっき撮った写真のプリントを見せてくれ、「気に入ったらどうぞ」と巧みな売り込み。1枚1000円が高いか安いか微妙なところだが、上手に撮れていたので記念に買った。日付も入っている。

好天に恵まれ、日中は暖かく、いい運動にもなった。薬王院の聖なる空間に足を踏み入れることができたことに感謝したい。