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日本の物価「携帯抜き」なら2%も。今後の注目は日銀審議委員の人事と高市早苗政調会長の動き

1日の日経モーニングFTで面白い特集をやっていた。夏場のコロナ禍が収まるに従い日本経済は回復基調にあり、石油価格の上昇、部品や原材料の供給不足、円安などで一部の商品が値上げされているが、消費者物価上昇率アベノミクスの目標値である2%にはほど遠い。

txbiz.tv-tokyo.co.jp

ところが、これには統計上のカラクリがあり、「携帯抜き」の消費者物価上昇率を計算すると、結構上がっているというのである。

菅義偉政権が推し進めた「携帯料金の値下げ」政策が効いて、携帯料金はかなり下がった。番組によれば、通信料金は前年比で5割以上安い。統計上、消費者物価の上昇が抑えられているのは、そのせいだという。

この見方が正しいとすると、物価の上昇は一部商品に限られるものではなく、もっと広範囲に及んでいると考えられる。

なかなか面白かったので文字起こししてみた。

                ◇

八木アナ 今後のマーケットを見ていく上での注意点はこちらです。「日本の物価『携帯抜き』なら2%も」ということですね。

豊嶋キャスター まさしく今、世界的な物価上昇で、これはアメリカばかりではなく、ニュースでもお伝えしたようにヨーロッパの方でも相当記録的な物価高となってますよね。やはりモノの不足、それから人手不足、こういったものが物価を押し上げている構図が鮮明になっています。それに比べて日本はという話になるわけですけれども、ただ足元見てますとガソリンは上がるわ、灯油は上がるわ、昨日やりましたけれどもイチゴも上がっていると。値上がり品目がかなり増えてきたという感じがします。

ただ統計を見ると消費者物価の前年比の上昇率は0.0%ちょっとくらいのプラスですからほぼ横ばい。そういう意味では世界でも独自の道を歩んでいるという感じがしますよね。

八木 背景には何があるんでしょうか。

豊嶋 実はこの物価統計にはカラクリといいますか特殊要因があります。それは携帯の通信料金の劇的な引き下げなんですね。10月の消費者物価統計を見てみますと、携帯の通信料というのは前年の同じ月に比べて半分以下となってます。

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携帯料金の劇的な値下げ~日経モーニングFT12月1日から

これは今年の春から大手の通信会社が始めた劇的な値下げが効いているわけです。そういう意味で菅前総理が残した置き土産と言っていいと思いますが、こういった官製値下げが消費者物価の水準自体を押し下げていると言っていいかと思います。

では、この携帯料金を除いた分の消費者物価を考えたらどうなのかということで、バークレイズ証券の試算を見ていただきたいんですが……。

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「携帯抜き」の消費者物価上昇率~日経モーニングFT12月1日から

青の線、こちらがよく使います生鮮食品を除く物価、コアCPIといわれているやつですね。これに対して携帯料金を除いた分を見ますと、10月でいいますと全体のコアCPIは0.1%のプラスなんですが、携帯除きは1.6%のプラス、さらに11月、12月は、これバークレイズの試算ですけど2%台に乗せてくると言ってるんですね。

これはもちろん条件が違うわけですけれども、日銀が物価目標としているのは2%なので、まあ一定の条件を付ければそこに届くぐらいの話ということになってくると。

ただ、これ、特殊要因とばかり言いにくいのは、もともと携帯で格安携帯を使っている人には関係ない話で、むしろこの赤い線の方が実感に近いわけです。それから大手の(高額な)プランを切り替えなかった人にも当然この赤い線に実感は近いと。

そういう意味では、今起きているこの値上げばっかりというまさしく体感物価にむしろこっちの方が近い、赤い方が近いということが言えなくもないということが言えます。もちろんこの要因というのは、来年の春以降は値下げ効果というのは一巡してきますので、いずれ来年の秋以降は収斂してくると、こういう見立てになっていますね。

八木 では、この携帯抜きの2%というのが、日本の金融政策に与える影響というのはあるんでしょうか。

豊嶋 はい。バークレイズ証券の山川哲史(てつふみ)調査部長は、次の3点を挙げながら、結論を言えば、来年日銀は動かないということを言っているんですね。

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バークレイズ証券・山川哲史調査部長による分析~日経モーニングFT12月1日から

1つは、基礎的なインフレ率というのは目標に遠く届かないと。このバークレイズの予想でも来年のピークでCPI全体の上昇率は1%がピークというふうに見ています。

それから2点目のところで財政拡張局面、これは黒田さんが日銀総裁に就任する前に政府と結んだアコード、協定というのがあります(2013年1月22日「政府・日銀の共同声明」)。デフレ脱却へのということですね。そういう意味では金融政策も引き続き支援をしていくんではないかと。

3点目が人事の話もからんでくるんですけれども、日銀の審議委員の分布というのを次に出してほしいんですが。

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日銀審議委員の分布・タカ派からハト派まで~日経モーニングFT12月1日から

来年任期を迎える審議委員の方というのは、上から2番目の鈴木人司(ひとし)審議委員、そして一番下の片岡剛士(ごうし)審議委員というふうになるわけですけれども、これ、下へ行くほどリフレ派といわれています。

片岡さんの後任がまたリフレ派ということであれば、今の状況は変わらないんですけど、鈴木さんの分がリフレ派に変わったりすると、政策決定のボードの半分以上がリフレ派になるという話なんですね。

で、それを後押しするんではないかと見られているのが自民党政調会長に就任した高市早苗さんなんですね。やはりマクロ政策については、アベノミクスの継承を訴えていると。そういう意味ではリフレ圧力というのは引き続きかかるんではないかというのが、山川さんの見立てになっています。

八木 ということで日銀は金融政策の正常化には動かないだろうということなんですが、ただ出てくる数字によってはマーケットは反応しますよね。

豊嶋 そこだと思いますね。この「携帯抜き」という少しトリッキーな話かもしれませんけども、マーケットでこれを想像している人はあまりいないと思います。そういう意味で11月の消費者物価が発表されるのが12月24日、クリスマスイブ。この見立て通りとなれば、ちょっとさざ波が金利の市場に立つかもしれません。

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今後の見通しに関しては、ちょうど新型コロナのオミクロン変異株が見つかったこともあり、感染の再拡大(第6波)が現実のものとなれば、事態が一変する可能性もある。