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「ブダペスト覚書」をいとも簡単に破ったプーチン

ロシアによるウクライナ侵略が始まった直後、NHK国際報道2022は「ブダペスト覚書」を取り上げていた(2月25日)。NHKニュースウォッチ9では全く出てこなかった解説だ。NHKはなぜこれを視聴率の高いニュースウォッチ9でも取り上げなかったのだろう。

www.nhk.jp

民放を含む地上波のテレビ報道は、NATOの東方拡大の話がロシアにとっての脅威になったという話やプーチン大統領の「NATOは1インチも東方へ拡大しないと約束したのに破った」という発言は大きく取り上げるが、なぜかブダペスト覚書には触れない。

プーチンの「NATOが破った」発言も、実は真っ赤なウソなのに、「ロシア側はこう言っています」式にそのまま放送していることが多いようだ。

メディアは、プーチンやラブロフらが繰り出す嘘とプロパガンダを、面倒でもいちいち事実を持って否定し、それが虚偽であることを白日の下にさらすべきだ。そうでないと「プーチンも悪いが、アメリカも悪い」「プーチンに軍事侵攻を決断させたのは、アメリカにも責任の一端がある」などと、喧嘩両成敗的な意見が台頭する恐れがある。

悪いのはロシアだ。ウクライナとの国境付近に大軍を集結させ、NATO非加盟を迫った時点で武力威嚇を禁じた国連憲章違反であり、完全にアウト。国際社会はこの時に世界中で声を合わせ、「国連憲章違反だ! 直ちに撤兵せよ。交渉はそれからだ」とロシアを徹底的に非難すべきではなかったろうか。

結果論かもしれないが、アメリカがロシアが作り上げた土俵に乗って外交交渉を始めたのは失敗だったと思う。

ロシアが大軍をもってウクライナを武力攻撃したのは、自ら創設に関わった国際連合の精神を踏みにじる行為であり、まぎれもない侵略だ。プーチンは自国の安全保障のためとか何とか言っているが、ウクライナがロシアを武力攻撃しようとした事実はない。「自衛のため」という理屈は成り立たない。

「東部のロシア系住民の保護」「東部親ロ派の要請に応じた平和維持部隊の派遣」という名目もウソだった。東だけでなく、南からも北からもウクライナに同時侵攻し、最初から首都キエフに向けて攻め上っているのだから、プーチンの狙いはゼレンスキー政権の転覆、そしてウクライナを丸ごと乗っ取ることにあるのは明白だ。

さて、「ブダペスト覚書」についてNHK国際報道2022の解説を記録しておこう。

油井 今回の軍事侵攻でロシアが破棄した国際的な約束の1つがこちら、ブダペスト覚書(1994年)です。

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これは1994年にハンガリーブダペストアメリカ、ロシア、イギリス、そしてウクライナの首脳(米クリントン大統領、露エリツィン大統領、英メージャー首相、UKRクチマ大統領)が結んだ覚書です。

覚書はウクライナが旧ソビエト時代からの核兵器を放棄する代わりに、アメリカ・ロシア・イギリスの関係国がウクライナの安全を保証する」というものなんです。

覚書にはこちらのような項目が記載されています。

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酒井 はい。「アメリカ、ロシア、イギリスは、ウクライナの独立と主権と既存の国境を尊重する。ウクライナに対する力の行使や脅威を控える。ウクライナに対する経済的圧力を控える」とありますけど、今回のロシアの行動を見ますと、この覚書に明確に違反していますよね。

油井 はい、そうなんです。アメリカなどは、これまでも繰り返し警告してきたんです。

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酒井 ブリンケン長官、ウクライナだけでなく全ての国を危険にする行為だと指摘していました。

油井 はい。国連安保理常任理事国でもある国が、こんな簡単に国際的な約束を反故(ほご)にすれば、国際秩序が崩壊するという危機感なんですね。特に今回懸念されるのは、核開発を進めるイランや北朝鮮などへの影響です。

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ウクライナのクレバ外相は今回、アメリカのテレビ局のインタビューで「核兵器を放棄したのは間違いだったか?」と聞かれ、「過去について推測はしたくない」と述べながらも、「もしアメリカがロシアとともにウクライナ核兵器を奪わなかったら、より賢明な決断ができたかもしれない」と語り、後悔の念をにじませたんです。

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核兵器を放棄することで得られるはずだった自国の安全の保証。それを保証した当事国がいともたやすく踏みにじり、さらに銃口を向けるという暴挙は、核兵器拡散の危険性を高め、世界の安全を著しく脅かしています。

                  ◇

ここでキャスターの油井氏は、ブダペスト覚書についてアメリカなどは、これまでも繰り返し警告してきたんです」と述べている。しかし、私はブリンケン長官がロシアのブダペスト覚書違反について語るシーンを、この2月25日の国際報道2022以外の番組で見たことがない。NHKニュース7はもちろんニュースウォッチ9でも、民放の平日夜の報道番組でもだ。この覚書の存在に触れた番組も、1回だけどこかの民放の報道番組で見たことがあるだけだ。

もっとも、主要報道番組を毎日、全部チェックしているわけではないし、そんなことは不可能だから、私の思い過ごしかもしれない。ただ、割とよく見る報道ステーションでも、この合意のことは今まで聞いた記憶がない。見逃した日に取り上げていたのだろうか。

ネットでは、テレ朝のニュース解説がヒットするが、これは「読めば分かる」というコーナーだから、番組で放映したのではなく、おそらくネット読者向けの解説だろう。しかも、ブダペスト覚書違反という指摘に対するプーチンの倒錯した論理による反論を、再反論しないままそのまま書いている。全く何を考えているんだろうか。

news.tv-asahi.co.jp

ウクライナの領土にロシアが侵攻したら「ブダペストの覚書に反するのではないか」ということについて、プーチン大統領は「『オレンジ革命』によって、ウクライナはもうかつての政権ではない」「革命政権であって、全く別の政権ができあがっているので、覚書にある領土の保全や武力の不行使というのは、すでに適用されない」という考え方を明らかにしています。

2004年のオレンジ革命で覚書は自動的に破棄されたというが、ロシアはプーチン言うところの「20世紀最大の地政学的悲劇」であるソ連邦解体後、西側の支援を受けて再出発した際、ソ連時代の条約などを引き継いだではないか。

プーチンの論理が正しければ、ソ連邦を否定する「無血革命」によって誕生した新生ロシアは、ソ連時代に諸外国と結んだ全ての条約等を破棄(無効化)していなければおかしい。しかし、そんなことにはなっていない。プーチンは、日本が旧ソ連と結んだ日ソ共同宣言(1956年)が日ロ間の平和条約交渉の法的基礎だとはっきり認めている。

オレンジ革命後のウクライナが、それ以前に結んだ諸外国との条約等は全て無効と自ら宣言したのでない限り、ロシアがそれらを勝手に破棄することはできない。それに「もはやブダペスト覚書は無効」と言うのなら、ロシアはウクライナ核兵器を返さなくてはならないはずだ。

この記事の著者は、なぜプーチンの言い分をそのまま書くだけで、そのおかしさを指摘しないのか不思議で仕方がない。これではプーチンプロパガンダを代弁しているだけではないだろうか。